ゲーム好きな人でも、CEROの対象年齢を気にして買う人は少ないのではないでしょうか。CEROの対象年齢は強制されるものではなく、あくまでゲーム業界が自主的に提示している指標に過ぎませんが、一部18歳未満の青少年への販売が禁止されているものもあります。
今回は、ゲームは好きだけどCEROはよく知らないというあなたに向けて、CEROの意義やゲームに関連する人たちに与える影響について簡単にまとめてみました。
CEROとは
コンピュータエンタテインメント機構(CERO)は、家庭用ゲームや一部パソコンゲームの倫理上の審査を行うNPO法人です。ゲームメーカーからの依頼を受けて、独自の倫理規定に基づき対象年齢を定めています。
2002年に設立された組織であり、現在日本で店頭に並んでいるほぼすべての家庭用ゲームは、CEROのレーティングを受けています。レーティングを受けたゲームは、パッケージの背表紙などに共通のロゴが記載されることになります。
■審査の対象となるゲーム
CEROによる審査は、日本国内で発売される一般向け家庭用ゲームや一部PC・スマホゲームを対象として行われています。法律などで義務化されているわけではありませんが、市場流通にはレーティングが不可欠であり、事実上強制されています。下記のハードウェアのうち、特に家庭用ゲームについては、ほぼすべて審査が行われています。
審査の対象となるハードウェア
セガゲームス | ドリームキャスト |
ソニー・インタラクティブエンタテインメント | PS、PS2、PSP(goを含む)、PS3、PSVITA、PS4 |
任天堂 | ニンテンドー64、ニンテンドーゲームキューブ ゲームボーイ、ゲームボーイアドバンス ニンテンドーDS、ニンテンドー3DS、Newニンテンドー3DS Wii、WiiU、Nintendo Switch |
バンダイナムコエンターテインメント | ワンダースワン |
日本マイクロソフト | Xbox、Xbox 360、Xbox One |
パソコンメーカー各社 | パーソナルコンピュータ (対応OS:Windows各種、MAC各種) |
携帯電話メーカー各社 | 携帯電話・スマートフォン等 (対応OS:Android、iPhone、WindowsPhone等) |
クラウドゲーム・サービス提供各社 | クラウドゲーム・サービス提供各社 |
審査の例外となるのは、自主制作のゲームやいわゆる同人ゲームといった、一般的な店頭には並ばないものとなります。
■レーティングの種類
CEROのレーティングは全部で5種類あり、ゲームの表現内容ごとに対象年齢が設けられています。A~Dの対象年齢とは、この年齢以上であれば安心して遊べるという倫理上の指標であり、購入やプレイを禁止する意味合いはありません。
ただしCERO Zについては、18歳未満へは販売しないという自主規制を設けています。具体的には、D以下のゲームと一緒に陳列せずにCERO Z専門のコーナーを設ける、コンビニなどでは取り扱わないなど、販売店側の対応に違いが出てきます。
レーティングの種類とゲームの一例
A(黒) | 全年齢対象 | ・ドラゴンクエストⅪ ・スプラトゥーン2 ・ポケットモンスター ウルトラサン・ムーン ・グランツーリスモSPORT ・マリオパーティ100 |
B(緑) | 12歳以上を対象とする内容が含まれている | ・真・三國無双8 ・聖剣伝説2 ・大逆転裁判2 ・ソードアート・オンライン フェイタル・バレット ・ストリートファイター 30th アニバーサリーコレクション インターナショナル |
C(青) | 15歳以上を対象とする内容が含まれている | ・モンスターハンター:ワールド ・ファイナルファンタジーXV ・鉄拳7 ・The Sims 4 ・スーパーロボット大戦X |
D(橙) | 17歳以上を対象とする内容が含まれている | ・龍が如く 極2 ・ニーアオートマタ ・地球防衛軍Ⅲ ・METAL GEAR SURVIVE ・DARK SOULSⅢ |
Z(赤) | 18歳以上のみを対象 18歳未満に対しては販売・頒布しないことを前提 |
・グランド・セフト・オートV ・バイオハザード7 レジデントイービル ・アサシン クリード オリジンズ ・コール オブ デューティ ワールドウォーII ・The Elder Scrolls V:Skyrim |
禁止表現 | レーティングを与えない |
審査の対象となるのは、性表現、暴力表現、反社会的行為表現、言語思想関連表現であり、これらがどれだけゲーム内に含まれているかが評価されます。詳細な審査基準は公開されておらず、レーティングの適正について議論を呼ぶこともしばしばあります。
禁止表現が含まれたものについては、レーティング外として日本国内で出回ることはありません。レーティング外となるのは海外ゲームが多く、内容を改変してCERO Zなどにレーティングを落として販売するか、またはそのまま日本へは進出しないかの二択となります。海外版と日本版では内容が異なるのは、CEROでレーティングを得るためといえます。
■公募された一般人が審査している
CEROの審査は、公募された一般人によって行われています。下記が条件であることがわかっています。
CERO審査員の条件 ・20代~60代 ・ゲーム関連の仕事をしていないこと ・3D映像や過激な表現に耐性があること |
タイトルごとに、年齢や性別、職業が偏らないよう考慮された原則3名のメンバーが招集されます。実際にゲームをプレイするわけではなく、メーカーがまとめた数十分の映像を見て、該当の表現があるかないかを判断していきます。個人の主観に左右されないよう、予め設けられた項目との照合を中心に行っていきます。なお審査員には少額の謝礼が発生します。
■法的拘束力はない
CEROのレーティングは、ゲーム団体との同意に基づいて自主的に行われているものであり、法的な拘束力はありません。CEROのA~Dの対象年齢とは推奨年齢のことを指しており、これを下回る年齢の人が購入して遊んでも法的に何ら問題はありません。
またCERO Zについても、18歳未満への販売・頒布をしないことが前提となった区分ではありますが、18歳未満の人がインターネットなどで購入してプレイしても、倫理的な問題は別として、法的な問題は発生しません。
■一部自治体では有害図書類
CEROに法的な拘束力はありませんが、一部の自治体ではCEROの基準を利用して、Z区分のゲームを一括して「有害図書類」に指定しているケースもあります。有害図書類とは、18歳未満への販売等禁止や陳列区別の義務が定められている出版物のことであり、これにはゲームソフトも含まれます。
有害図書に指定されると、青少年保護育成条例に基づく罰則が発生してきます。罰則が発生しない努力義務とする自治体もありますが、違反により20~30万円以下の罰金が定められているケースもあります。条例に定められる内容は自治体によって異なりますが、概ね下記のようなものとなります。
有害図書類に指定されると・・・ ・18歳未満への販売、頒布、交換、貸付等の禁止 ・有害図書等を他の図書等と区分して陳列する義務 ・18歳未満の有害図書等の購入、閲覧、借受けを禁止する旨の掲示を行う義務 |
いずれも責任が問われるのは販売する業者側であり、18歳未満の人がCERO Zのゲームを遊んでいても、それを罰する具体的な法律はありません。
CEROの影響
CEROのレーティングが与える具体的な影響について、販売店、ゲームメーカー、そしてゲームのプレイヤーに分けてまとめました。
■販売店に与える影響
CERO Zの区分があることで、販売業者は買い手の年齢確認や区分陳列などを行わなければならなくなります。条例指定のある地域では罰則もありえますから、特に気をつけなければなりません。
デメリットがある一方で、CERO表記がある商品を扱うことで、販売上リスクがある作品を避けることができます。
万が一、違法性のある内容だと訴えられてしまった場合、売る側にも責任が発生することがあります。とはいえ事前にすべての作品をチェックするのは無理があり、仮にできたとしても販売店によって判断に偏りがでることもありえます。
そこで包括的な審査を行うCEROが、販売店に代わってふるい分けを行ってくれることで、問題のある作品を販売してしまうリスクを減らすことができます。また対象年齢を明確に示すことで、自己責任での購買を促すこともできます。
CERO表記があることで、販売しても大丈夫というお墨付きを得られるのです。逆にCEROの審査を受けていないゲームについては信頼性に欠けるとして、取り扱わなくなります。
■メーカーに与える影響
自主規制といえども、CEROの審査に通らないと販売店に置いてもらうことができないため、必然的にゲームの内容はCEROの基準内に収まるように作られることになります。またZ区分を受けてしまうと、店頭での陳列方法や購買層にも制限が出てくるため、売上本数にも影響する可能性もあります。 一方で、CEROによる審査と年齢表記があることで、販売店と同様に、表現を巡るトラブルのリスクを軽減できるともいえます。CEROという第三者機関の審査を通ったという信頼性を獲得できる、年齢基準を設けることで自己責任での購買を促すことが出来る点でメリットになります。
■プレイヤーに与える影響
販売店にはCEROのレーティングを受けたゲームしか並ばないため、実質的にCEROの基準をクリアしたゲームしか遊べなくなります。レーティング外のゲームやレーティング用に修正される前のオリジナル版で遊ぶことは不可能ではありませんが、日本語に対応していなかったり、特定の流通ルートでしか手に入らなかったりなど、不都合は多くなります。
しかしその一方でCEROのレーティングを見ることで、そのゲームの過激さの程度を事前に知ることができます。保護者が子供にゲームを買い与える際の指標にもなります。
まとめ
CEROの存在は、表現を巡るトラブルのリスク軽減ができる点で、メーカーや販売店にとってメリットの大きい存在ではありますが、プレイヤーが自分の好きなゲームを守るということにも繋がります。
CEROのZ区分が新設されたのは、神奈川県による「グランド・セフト・オートⅢ」の有害図書への個別指定がきっかけでした。それまでは、A~Dのレーティングと同様、18歳以上推奨という意味合いのレーティングしか存在しませんでしたが、この一件を受けて、CEROは自主規制の範疇で18歳未満への販売を禁止するZ区分を設けました。
その後、有害図書の指定基準をCEROのZ区分に準拠する県も出てきたため、結果的に規制は厳しくなってしまいましたが、各県知事などの個別的・主観的な判断によって、ある日突然有害図書として指定されるのは、メーカーや販売店だけでなく、遊ぶ人たちにとっても不利益になります。その点、ゲームメーカーとの同意の上でレーティングされているCEROの方が、まだ良心的といえます。CEROはゲーム業界の発展に不可欠な存在といえます。