名前はアイデンティティそのものであり、社会生活に大きな影響を及ぼします。しかし自分の名前を自分で決めることはできないために、名前を巡ってしばしばトラブルが起こることがあります。良かれと思ってつけられた名前でも、世間ではキラキラネームと呼ばれたり、あらぬ誤解を生んでしまったりするなど、本人にとっては耐え難い苦痛となるケースもあります。
名前のせいで社会生活に何らかの支障を及ぼしている人のために、改名できる制度があります。改名といっても、漢字の読み方だけ変える場合と、字面ごと変える場合で方法が異なり、読みを変える手続きであれば、比較的簡単に行うことができます。しかし字面を変える手続きについては裁判所の許可が必要となり、ある程度の事前準備が必要です。
名前の読み方を変えたい
「翔馬」と書いて「ぺがさす」と読むなど、漢字に無理な当て字をするのもキラキラネームの特徴です。例えば「ぺがさす」を「しょうま」というように、漢字の読み方だけを変えたい場合には、市役所などの地方自治体で簡単に変えることができます。
実は戸籍に登録されるのは字面だけであり、読みがなの情報はありません。住民票や保険証などに読みがなの記載はありますが、呼名のためなどで便宜上登録されているにすぎません。読み方の変更は改名には当たらないといっても良いでしょう。
読み方の変更は、住民票のある地方自治体で即日手続きを行うことができます。必要なものは本人確認書類などとなりますが、詳細は各自治体へお問い合わせください。
変更前の読みで登録されたクレジットカードや口座、パスポートがあれば、読み方を訂正したい旨を連絡し、指示に従って情報修正の手続きを行えば問題ありません。
名前の字面を変えたい
読みがなだけでなく字面ごと全く別の名前に改名したい場合には、家庭裁判所へ申請して改名許可を得なければなりません。個人的な趣味や好き嫌いで変えることはできず下記のような事由が必要となります。詳細は→名前を変えたい!改名できる条件とは?
改名に必要な事由
・奇妙な名前である
・難しくて正確に読まれない
・同姓同名者がいて不便である
・異性と紛らわしい
・外国人と紛らわしい
・神官や僧侶となった又はやめた
・通称として永年使用した
など
■申請方法
名前の改名申請は、住所地のある家庭裁判所にて、15歳以上であれば誰でも手続きすることができます。15歳未満の場合は、両親など法定代理人による代理申請が必要です。弁護士に代理申請を依頼することも可能です。申請自体は何度でも行うことができますが、一度でも改名が承認された場合、再度改名することは難しくなります。
申請時には申立書や本人の戸籍謄本が必要となり、永年使用の実績を証明する資料(通称名が使われている郵便物やポイントカード類)があれば一緒に提出を行います。
申立書の書式は裁判所のホームページでダウンロードすることができます。
費用としては、申立書に貼り付ける収入印紙代800円と返信用切手代が必要となりますので準備しましょう。
申請できる人 | ・15歳未満・・・法定代理人 ・15歳以上・・・名前を変えたい本人 ・弁護士(代理人) |
申請先 | 住民票のある家庭裁判所 |
必要なもの | ・申立書 ・申立人の戸籍全部事項証明書 ・関連資料 ・費用(収入印紙800円+返信用切手代) |
審査の途中で、直接事情を聴取するために裁判所から呼び出しを受けることがあります。必ず出頭しましょう。
■戸籍の変更手続きが必要
無事裁判所からの改名許可が降りた際には、市役所で戸籍名の変更手続きを行う必要があります。手続きには、家庭裁判所で発行された審判書謄本や、市役所のホームページなどでダウンロードできる名の変更届が必要です。また届出人の印鑑や、本籍地以外の市役所で手続きを行う場合には、戸籍全部事項証明書が必要となります。戸籍全部事項証明書の発行には450円かかります。
通知カード、マイナンバーカード、住基カードについてはなくても手続きはできますが、持参することでその場で改名手続きを行ってくれます。
市役所によって必要種類が異なりますので、詳細は各市役所の戸籍課にお問い合わせください。
届け出できる人 | ・15歳未満・・・法定代理人 ・15歳以上・・・名前を変える本人 |
申請先 | 下記いずれかの市役所 ・住民票のある市役所 ・本籍のある市役所 |
必要なもの | ・裁判所発行の名変更許可の審判書謄本 ・市役所指定の名の変更届 ・届出人の印鑑 ・(本籍地以外の市役所の場合)戸籍全部事項証明書 ・(あれば)通知カード、マイナンバーカード、住基カード |
市役所への届け出が完了した後は、各種身分証明書、クレジットカードや保険など改名前の名義が使用されているあらゆるものの変更も忘れてはいけません。身分証明書の変更手続きを優先的に行うことで、その他の手続きもスムーズに済ますことができます。
どれも面倒な手続きですが、やはり一番骨を折るのは裁判所の許可です。改名は永年使用の実績を作るなど万全の体制で挑むことが求められます。