離婚などの家庭の問題の実績が多数あり、労働問題に関しても、委員会に所属し、最先端の問題を研究したりなど、見識の広い平山弁護士に本日はインタビューさせていただいた。
著作
裁判例に見る「非正規公務員」の現状と課題
東京弁護士会労働法制特別委員会 (著)
新労働事件実務マニュアル(第3版) 東京弁護士会労働法制特別委員会 (著)
賃貸住居の法律Q&A 単行本東京弁護士会易水会 (著)
入門 労働事件(解雇・残業代・団交・労災) 東京弁護士会労働法制特別委員会若手部会 (編集)
労働事件における慰謝料 東京弁護士会労働法制特別委員会 (著)
メディア掲載、セミナー多数
所属弁護士会:東京弁護士会
先生が弁護士を志した理由は?
私は島根県出身なのですが、漫画で「島根の弁護士」という作品が出ていたりと、かつてネタにされるくらい弁護士過疎の地域でした。
今は解消されたみたいですが、私が子供の頃は島根県の弁護士の過疎というのは1つの社会問題と言われていた時期で、そんなに人が少ないのであれば自分が弁護士という仕事に就くのもいいかなと思ったのがそもそものきっかけです。
その後、大学で法律を勉強して、OBの弁護士の方たちと交流する中で、弁護士の仕事はおもしろいなと思い本格的に目指すことにしました。
府中ピース・ベル法律事務所の特徴って?
扱っている事件の分野としては、離婚など、家庭の問題が圧倒的に多いです。
去年1年間だけでも100件以上の離婚や慰謝料の相談を受けて、様々な案件をお手伝いさせていただきました。離婚事件の処理件数は、おそらく他の同規模の事務所よりも実績が多いのが特徴の1つですね。
また、労働事件も取り扱っています。大学生のころから労働法を学んでおり、職場で働く人を取り巻く法律問題に興味がありました。今では東京弁護士会の労働法制特別委員会という委員会に所属し、労働法や会社と従業員のトラブルなど、最先端の問題を研究しながら、それに関連した書籍、実務マニュアルの執筆作業にも積極的に参加しています。
そもそも、労働事件というのは、債務整理や交通事故などのほかの事件に比べて、注力分野として積極的に取り扱っている事務所は多くない内容です。現に、このエリアで労働事件の相談ができる弁護士が少なかったから、私のように労務を(最低限は)心得ている弁護士がいてくれて助かる、という声を知り合いの社労士から貰っているくらいです。
たしかに、法制度的にはやや特殊な分野ではあるのですが、規模の大小を問わずすべての企業、そして仕事をしている人なら誰しもが関わってくる大事な法律分野なので、それに対して見識があるのは強みですね。
私が大事にしていることは、困っている方の問題を解決するために、具体的にどういう解決方法があるのかを提案してあげることです。
解決のルートを探し出す際に、何が法律的に問題なのかを速やかに聞き出せなければ時間が無駄に過ぎてしまうので、当事務所では、質問シートを使ってスピーディーに問題点を洗い出せるようにしています。
また、解決方法を具体的に導きだすための工夫としては、相談しやすい環境を作ることが重要だと考えていて、相談室にはかなり気を遣い、木目調の優しい雰囲気の相談室を作りました。離婚や、相続、職場の問題で事務所に来る人は、最初は緊張しながら来られる方が多いと思いますので、解きほぐしてあげるために観葉植物を置いたりして、明るい雰囲気の相談室にしています。
また、相談の時も相手を威嚇しないように、受け入れてあげているということを分かってもらえるように対応しています。
もともと私自身はシャイな性格なのですが、そこは私の方から心の壁を取り払って、相談者に寄り添えるように努めています。弁護士との距離感の近さ、ある意味での話しやすさが、相談者から見た時の信頼関係につながるので、特にこういった「目に見えないもの」が大事だと、意識してやっていますね。
今後の弁護士業界とその中での先生の展望について教えてください。
これから弁護士業界がどうなっていくかは、本当に先が見えないというのがあります。
現時点でもここ10年のうちに若手が増えた、広告が自由化されたなど弁護士業界の様相が大きく変わったという声が良くありますが、これからの弁護士業界の変化は、そのような月並みな話にはとどまりません。AI技術の発達、規制緩和、そして人員増大や司法制度の仕組みは政治的な要素にも影響を受けますが、はたまた憲法改正の議論など、日本,そして世界が大きな転換の波の中にいます。その中で社会に求められる司法の役割、意義のようなものも、ますます重大化していくと思いますが、当然、私たちが果たすべき使命というのも、少なからず形を変えていく可能性も高いと思っています。
そのような意味で確信していますが、今までと比べると、これから弁護士を取り巻く環境が大きく変わることは間違いないでしょう。
ここで大事なのは、我々弁護士自身が、社会に求められる立ち位置と、進むべき方向性を見誤らないことだと思います。
例えば、私たちは、各弁護士会に加入が義務付けられています。弁護士は国の管理下にはなく権力から独立しているというのが、ほかの士業にない特徴の一つであり、そのぶん弁護士会の果たす役割も特殊なのですが、この弁護士会の在り方についても様々な議論があります。たとえば増えすぎた若手の会費を免除しようとか、一部では弁護士会への強制加入自体を廃止にしようという極端な議論が出ています。あるいは、これまで弁護士会で行われてきた、多数派による会運営の在り方について、積極消極様々な意見も出てきています。
・・・このインタビューでは各論的な視点での私見コメントは控えますが、いろいろな問題や考え方、そして可能性があることは確かだと思います。ここで私たちが弁護士業界の将来を案ずるときに、弁護士の社会的な意義、私たちが果たすべき役割について忘れないようにしないといけません。
すなわち、私たちが究極の理念とするのは、「基本的人権の擁護」や「社会正義の実現」という大きな目的だったはずです。この目的を達成するための手法として、中間的に何をやらないといけないかという視点を、我々は常に考えておくべきだと思うのです。
弁護士会の活動や仕事のあり方、そして日常的な法律事務業務の進め方を、これまでのノウハウで間違わないように気を付けながら進める、でも、今までのやり方だけでなく、時代の変化に合わせて、私たちもいろいろ工夫していく必要があります。社会が変わっていく以上、弁護士も変わっていかなければなりません。
進化論と歴史が示すとおり、変化の時代を勝ち残っていくのは、強い者ではなく、環境の変化に対応できる者です。そして私たち弁護士が柔軟に生き残らなければ、人権擁護も社会正義も実現できません。日本の発展のために、私たち弁護士も変化と発展をしていく必要があるのです。
普段の業務は目が回るほど忙しいのも事実ですが、目の前の即物的な成功失敗に一喜一憂するのではなく、もっと大きな視点で、国をよくするために何ができるか、弁護士会が間違わないために何ができるか。ここの弁護士が身近で現実的な問題として考えていくことが求められると思います。
そのうえで、多くの弁護士が弁護士会の活動に積極的に顔を出して、自らの思い、意見を表明することが大事になってくると思います。様々な弁護士が意識を高く持ち、意見を集約し叡智を結集させれば、必ず人権擁護と社会正義実現という大きな理想が実現できるはずです。
私も、東京弁護士会の中のとある会派に所属していて、執行部に就任したことも2度もありますし、今年も会派全体のグループで業務改革を扱う委員会に所属をし、これからの弁護士業務の在り方を研究しています。こういった活動は、それ自体が売り上げにつながる話ではありませんが、弁護士会を支える大事な活動であり、弁護士の意義の根底につながる活動だと信じていますから、今後も積極的に続けていきたいと思っています。
このように、様々な意味で日本が変革を求められ、また転換を強いられている時代だからこそ、大きな流れの中で、将来どういう方向に弁護士業界が向かっていくことが日本をよりよい社会に導くのか、モニターできる人でありたいと思いますし、たとえば弁護士会が変な方向にいきそうになった時に食い止められるような発言力や、影響力を少しでももてるようになることが、私の中間的な、そして大きな目標です。
そのためには、私自身が世間のいろんなことを知らなければなりませんし、いろんな人脈を作っていかなければなりません。
私も、府中ピース・ベル法律事務所をこれからどんどん大きくして、私と同じ理念を持つ仲間を増やしていきたいと考えています。これは、すべての活動が私にとっては大きな一歩であり、同時に全体から見れば小さな一歩にすぎませんが、そのひとつひとつが、日本に住むすべての人が平和に暮らせる社会を作るため、若い弁護士に課せられた使命だと信じています。