離婚時に、今住んでいる家をどうするかについては財産分与の大きな問題となります。ローンを支払い終わっている場合には、一つの財産として扱うことができますが、ローンが残っていた場合には、財産分与の対象とならないケースもあるため、慎重な判断が必要となります。
ローンが残っている住宅の財産分与について、どのように分けられるのかパターン別にまとめました。
不動産価値の算定方法
まずは、住宅ローンが残る家の価値を算出する必要があります。家の価値は、現在の売却額から残債を差し引くことで算出することができ、当該額が財産分与の対象となります。不動産価値がプラスとなる場合をアンダーローン、マイナスとなる場合をオーバーローンといいます。
不動産の価値=売却額-残債
アンダーローン・・・残債よりも売却額が上回ること(0<不動産の価値)
オーバーローン・・・売却額よりも残債が上回ること(不動産の価値<0)
アンダーローンの場合
家を売却した時に、手元にお金が残る場合にはアンダーローンとなり、財産分与の対象となります。離婚後に家に住むかどうかで財産がどう分配されるかが決まります。売却額が1,000万円、残りのローンが500万円だったケースを例とします。
売却額:1,000万円
家の残債:500万円
不動産価値=1,000万円-500万円=500万円
離婚後、次の2パターンが考えられます。
■家を売却する
双方とも家を出ることになり、家を1,000万円で売却し500万円のローンを精算すると、手元に500万円が残ります。現金500万円が財産分与の対象となり、基本的には250万円ずつ分配されることになります。
■夫婦の一方が住み続ける
夫婦の一方が住み続けることになった場合でも、不動産の価値500万円が財産分与の対象となり、住み続ける方が500万円分の利益を得たと判断されます。
住み続ける方は出ていく方に250万円を支払うことで公平に分与されたことになります。250万円は、他から分与された財産と相殺されるか、足りない分は現金で支払う必要があります。
また残りのローンは原則住み続ける方が払うことになります。必要があれば名義変更の手続きを行います。
オーバーローンの場合
売却しても手元には残債だけが残るオーバーローンの場合には、残債分もマイナスの財産分与の対象として他の財産と相殺されることになります。ただし他の財産額で賄えない場合には、財産分与の対象にはなりません。
売却額500万円、家の残債800万円だった場合を例として説明します。
売却額:500万円
家の残債:800万円
不動産価値=500万円-800万円=-300万円
■家を売却する
オーバーローンで家を売却する場合、残債300万円も同時に解消しなければならなくなります。300万円を預金など別の財産によって即支払いできる場合には問題ありませんが、300万円を返済するすべがない場合には売却という選択肢は難しくなります。任意売却を行い、無担保のローンを新たに組み直す方法もありますが、審査が必要であり、どちらが支払うかについては別途協議する必要があります。
■夫婦の一方が住み続ける
夫婦の一方が住むことになった場合、他のプラスとなる財産が300万円を超える場合には、財産分与の対象となりますが、別のプラスとなる財産が300万円以下となる場合には、負債だけ残るため財産分与の対象とはならず、原則契約に定められている支払義務者がそのまま払い続けることになります。
例えば、預金が別に500万円ある場合、残債は清算され300万円にまで減り、不動産価値は200万円となります。住み続ける方は半額の100万円を支払うことで財産分与したことになります。預金がまったくない場合には負債だけが残るため、家については財産分与の対象とはなりません。夫名義でローンを組んでいれば、原則夫が支払い続けることとなります。
公正証書での文書化を
実際に離婚給付について計算する際には、養育費や慰謝料なども絡んでくるため、上記の通りとなることは少ないでしょう。また契約名義や保証人変更の問題もあり複雑となります。
支払いについての取り決めは長期の問題となるため、必ず公正証書での契約書作成を行いましょう。もしものときには債権名義として強制執行が可能となります。財産分与の話し合いから書面化まで、すべて弁護士に任せることもできますので、不安な場合には相談してみるのも一つの手です。