新宿御苑にて弁護士事務所を始めて22年、その前を含めると30年以上。その経験と個人事務所ならではの対応をしている福本先生に本日はインタビューさせていただいた。
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所属弁護士会:東京弁護士会
先生が弁護士を志した理由は?
法曹に興味をもったきっかけは、中学の頃に通っていた学習塾の先生が法律的な仕事をしてみたらという漠然とした発言からです。その先生には私が一本気で固くてまっすぐに見えていたのかなと思います。
私自身中学までは親から穏やかでのんびりな性格で、会社員や公務員などの当たり触りのない仕事をやっていくタイプだと見られていました。ところが先生から指摘を受けて、高校からなんとなく、正義感や負けん気などを自分の中で感じそうなのかなと思うようになりました。
それが検察官に結びついたのは、日本の刑事裁判に対する絶望落胆を司法修習時代に目の当たりにしたことです。逮捕されたら即有罪という風潮で、将来無罪になったとしても、仮に不起訴になったとしても失ったものはかえってきません。検察官がちゃんと警察の調査が適切かどうかチェックしつつたとえ犯罪が成立しても起訴猶予の制度があるので、適切に対応しながら、被害者、被疑者と1番最初に接するのが検察官なので、そういう方々の近くにいて見ていきたいなと思ったのが法曹を志した理由です。
結果弁護士になったのですが、弁護士になった最終的な理由は一言で言えばアクシデントです。昭和60年4月のことです。今とは違って司法修習は4月スタートで当時最後の試験の刑事裁判の科目で合格留保、いわゆる落第をしてしまったんです。追試はあるのですが、卒業が7月に遅れてしまいその段階で弁護士しか道がなくなりました。それまでは一貫して検察官志望でしたが、そのアクシデントにより弁護士になりました。
北村・松谷・きさらぎ法律事務所の特徴って?
まず場所についてはマンション街で、大通りに面していないので、決して法律事務所に相談に行っているかどうかがわかりません。やはり世間の方は弁護士事務所に入って行く姿をあまり人に見られたくない、人に会いたくないという人が多いのでこのエリアのマンション街に事務所をかまえています。
また、1人でやっているので、他の弁護士の代用が利きません。つまり、私の依頼者になっていただける方は、すべて私との信頼関係です。私からさらに下請けのように頼むということはないので、1対1の強固な信頼関係が築けます。選んで来ていただいて、私も選ばれている。それが1番大きいところだと思います。
法律相談の対応としては、その人にとってなにが収めどころなのか、落としどころなのか解決ポイントなのかを重視しています。
初めての方が相談に来た時に
「相手からこんな要求を受けたのですが大丈夫でしょうか」
「こういうことが本に書いてありましたが通りますでしょうか」
「何月何日までに〇〇しなさいという書類がきたので急いでいます」と言われることが多いです。
そこで私が必ず言うのが、
「あなたにとって何が解決か考えましょう」
「相手がどうだからとか、相手の掌にのっかって物事を考えるのはやめましょう」
「あなたにとって何がいいのかゆっくり考えましょう」
と言っています。
そのために初回の時間を制限しないで、あなたにとって何がいいのか一緒に考えるというスタンスでやってます。
今ネット社会が非常に発達していますから、みなさんいろいろな情報を持っています。もちろん間違った情報を持っている人も大変多いわけです。私の場合は解決までの法律相談と考えていて、こちらは依頼を受けるつもりでおります。だから解決できない問題はないということをみなさんに例外なく申しております。
ベストということは世の中にはないので、何がベターかを考えたときに、あなたにとって客観的にベターな方法は何かを考えて、そこに行くためのポイントを押さえ、プロセスを考えて対応していくことを心がけています。
今後の弁護士業界とその中での先生の展望について教えてください。
当然数がどんどん増えるのは当たり前なのですが、あちこちで言われているのが質の低下です。質の低下というのは、法律知識があるないではなく、大切なことは依頼者を説得できるかどうかだと思っています。自分の依頼者をどう説得するかが弁護士の力が試されるところです。依頼者を説得することで、依頼者にとっての落としどころ、落ち着きを与えてあげることが大事なのですが、結局それができていない弁護士が非常に多いと感じています。依頼者の言いなりになって、根本の解決にはならないことばかりしています。最近の弁護士像として、とりあえずなんかやってみようかな。やれと言われたから受けてみよう。という人が大変多いです。その方に事案紛争を解決しようとする姿勢があったのかなと思いますね。
今後はやがて私が60代になり、もちろん自分が学んだ法律も古くなるので、勉強しなければなりません。でも、単なる法律の勉強に関しては、若い人には敵わないので、どこが武器かと言うと、やはり経験だと思います。経験で物事を見ています。
慰謝料の相場があると思うのですが、この事例だといくらですというのがよく本に書いていたり、弁護士がネットに書いたりしています。もちろんでたらめな情報ではないと思いますが、私はそういうことは全く信用してはいけませんと言っています。なぜならば、依頼者にとっては違う、あなただけの事案であってあなたのためにどうなのかということが大事。白紙に戻ってやっていきましょう。と単刀直入に言っています。
人間の本性として、自分が有利なこと、知っていることプラスになるようなことばかり考え、その状況に近いからと当てはめてしまいます。それは仕方のないことだと思いますが、私にはこれまでの経験がありますので、一切ゼロで考えるようにしています。
これからもっと経験を積んでいくつもりです。意外にも経験というのは依頼者から学ぶことも多いです。依頼者はやはり弁護士に対して、意見を言ったり逆らったりするのは遠慮し、基本的に怖いと思っているようです。そうなると独善的になってしまうので、常に注意しなければならないところです。また、裁判官のぽろっとした発言で学べることもあり、反面教師になれることもけっこうあります。これは本当に場数を踏むことで学べていることだと思います。家庭裁判所では特にそれをものすごく感じますね。家庭裁判所では調停委員が間に入るケースが多いです。そうなると、関わる人が増えます。いろんな人を見る機会が増えるので、依頼者からも、裁判官からも、調停委員からも反面教師含めて、多くを学ぶことができます。
私もそうですが、調停委員も裁判官も依頼者というか一般市民から裁判所に来る人から見られているということを常に心がけて仕事をしなければいけないのだと思っています。