ニューヨークの法律事務所での勤務経験もあり、日本在住の外国人の対応も行っている佐久間先生に本日はインタビューさせていただいた。
メディア掲載多数
著書
「知的財産法重要判例」(学陽書房、共著)
「実務知的財産法講義」(民事法研究会、共著)
「Q&A企業の情報管理の実務」(新日本法規、共著)
所属弁護士会:東京弁護士会
先生が弁護士を志した理由は?
私の親戚には法曹関係者はいなかったので、業界の実情を全く知らなかったのですが、子供の頃に裁判もののドラマをテレビで見ていて、その中で刑事事件の弁護人が無罪判決を勝ち取るシーンが多く、弁護士という職業に対する憧れとかっこいいな、というイメージを抱きました。自分のまわりでも弁護士という人を見たことがなかったのですが、弁護士は裁判を通じて困っている人を助けられるという漠然としたイメージを持っていました。
ちょうど大学に入った年に父は定年を前に早めに肩たたきにより退職し、兄は新社会人で銀行員になったのですが、土曜日が休みではない時代で、さらに毎日終電帰りですごいクタクタになるまで仕事をしていているのを見て、会社員という職業は終わりも始めも大変なのだなと、幻滅を感じました。そこで子供の頃抱いていた弁護士のイメージを思い出して、会社員にならない道として弁護士はどうかな、ということを考えるようになったのがきっかけです。
佐久間総合法律事務所の特徴って?
強みと言えるのは英語を使ったサービス提供ではないかと思います。アメリカのロースクールに留学して、その後2年ほどアメリカの法律事務所で勤務した経験があります。丸3年アメリカにいたこともあり、英語で書類を作ったり、契約書を作ったりもできます。日本に住んでいる日本語が得意でない外国人の代理人となって、離婚事件や労働審判などの案件を英語でコミュニケーションをとり、裁判所に出す書類も英語で原稿を作ったりしている事務所は、他にはあまりないのではないかと思います。
また、裁判にならないようにするにはどうすればよいか、といった視点からの事業者向けのアドバイスもしています。さらに、法律の観点からのアドバイスにこだわらずにお話をすることも多いです。個人のお客さんで家族関係の悩みを抱えている人や、隣人トラブルを抱えている人が相談にいらっしゃるのですが、法的にはできることがないというケースが多くあります。「あなたの願いを叶えるための法律はありません。」「依頼を受けたとしても、費用倒れになってしまう可能性もありますよ。」といったように断るのは簡単ですが、弁護士は法律の専門家だから、法律問題だけをアドバイスすればいいと割り切ってしまう発想でいいのか、と疑問に思うようになりました。こちらの事務所は初回相談1時間まで無料としているのですが、わざわざ来てくれた人に「法的には無理です。できることはありませんね。」と告げるだけで帰してしまっていいのか。目の前に困っている人がいるのに、せっかく足を運んで来てくれたのに、せめて何かお役に立てることはないのか、と思うようになりました。
そこで「法的に無理ですよ。」「意味がないですよ。」と冷たく突き放すよりは、「トラブルの背景にはこういうことはないですか」「こんな風に考えたらどうですか」といったようなカウンセリングをして、少しでもモヤモヤを晴らしてあげることができれば、それも人助けになるのではと思っています。トラブルで悩みや不安を抱えている人に対して、まずは悩みや不満を聞くこと、傾聴することが大事だと思いますので、背景事情も含めて話をじっくり聞くようにしています。
いつも扱っている裁判案件の件数自体は他の法律事務所よりは少ないと思いますがどちらかというと私は職人気質で、1度引き受けたものは徹底的にやる方針なので1つ1つの案件を丁寧に扱っています。裁判所に提出する書類も、原稿は必ず事前に依頼者に読んでもらいます。依頼者から修正が入ったら、修正したものをもう1度見てもらって、最終確認をとってから裁判所に提出しています。1件1件にだいぶ時間をかけていると思うのですが、それは当たり前のことだと思ってやっています。
最近、他の法律事務所の弁護士の対応への不満を、初めて電話をかけて来られた方から聞かされることが時々あり、それに比べると自分はもっと丁寧に対応しているな、と感じることが多く、サービスの質には自信を持って対応しています。お医者さんはインフォームドコンセントということが求められるようになり、専門的な内容でも重大な結果をもたらすリスクがある場合には、患者が素人であってもきちんと事前に説明をするようになっていると思います。弁護士も同じことで、法律について素人の依頼者は、裁判手続の専門的なことは気にしなくていいというのではなくて、依頼者が求めていることの実現に向けて、どのような方法で何をしており、何のために必要な作業なのか、どういう意味のある書類なのか、といったことをきちんと依頼者の方に説明するようにしています。
今後の先生の展望について教えてください。
日本では「大きいことはいいこと」という発想が根強いようで、何事も大企業中心の発想で物事が決まるように感じることが少なくありませんが、実は、日本にある会社の9割以上、ほとんどが、いわゆる中小企業と言われる会社です。そして、日本の労働者の7割が中小企業で働いています。私はそうした中小企業がもっと元気にならないと、本当の意味で日本の社会経済に活気が出ないと考えており、特に中小企業を支援したいと考えています。中小企業の社長さんもいろんな悩みを抱えています。その人たちの話を聞いてあげるコンサルタント、カウンセラーという方向性も今考えています。裁判専門の弁護士というよりは、裁判ではない、いろんなところでお役に立ちたいという思いがあり、中小企業診断士の登録をしているのもそれが理由です。
弁護士はトラブルが起きたら相談に行くところというイメージを持たれていると思いますが、実際はトラブルが起きてから相談に来られても手遅れというケースが非常に多いです。何とかみなさんにもっと早いタイミングで相談に来てほしいと思っているのですが、なぜか弁護士という肩書だと敷居が高いと思われてしまい、なかなか来ていただけないことが多々あります。もっと早く相談していただければ他にやりようはあったのに、結局相談に来られた段階では遅すぎて裁判をやってもうまくいかないということが本当に多いです。弁護士に着手金を払って頼んだのにうまく行かなかったと言われてしまい、伝統的な日本の弁護士の報酬基準では裁判に負ければ成功報酬はゼロになってしまいます。弁護士として一生懸命やったとしても、結局負けてしまうとその労力は全く評価されませんし、負けてしまえば依頼者からも感謝されないという、とても不幸な関係になってしまいます。だったらお互いWin-Winの関係になるためにも、そのような状況に至る前のもっと早い段階で弁護士が介入することができれば、アドバイスによって未然に紛争になることを防ぐことができる場面が増えると思うし、そうすれば、裁判のための費用も時間もエネルギーも不要となるので、依頼者にとっても好都合だと思うし、依頼者も弁護士もお互いにWin-Winの関係になれると私は思っています。
名刺交換会などで弁護士の名刺を出すと、今何もトラブルはないからと言われてしまうのがすごく残念で、そんなこともあって中小企業診断士の登録をしています。 今どんな仕事をしていますか、業績はどんな状況ですか、どんな取引をしていますか、といった話は弁護士という肩書では聞きにくいですが、日常的な事業運営の過程に実はトラブルや紛争の火種が見過ごされていることがあるのです。早い段階から話を聞くことで、相手方から突き付けられた契約書の穴や、その他の法的な問題などに気付けることもあります。 後からではどうしようもないということが多々あるので、ダメ元でもいいので契約書にハンコを押す前に相談してほしいです。 継続的に顧問契約を結んで日常的に気軽に相談していただき、トラブルにならないようなアドバイスやコンサルティングができる体制の方が、依頼者といい関係でいられると思っています。そして、トラブルを未然に防ぐためのお役に立ちたいと考えています。