銀行口座が凍結される理由として、債務整理、相続、不正利用を疑われた時の3つのパターンが考えられます。
債務整理については、一連の手続きの中で起こることなので焦らず対応が可能ですが、預金者の死亡や不正利用による凍結は予期できないために、トラブルになってしまうことが多くなります。
中には身に覚えのない理由で口座を凍結された上に、二度と口座を作れなくなるなど、生涯の社会生活に関わるような事態に発展するケースもあります。
あなたも他人事ではない!銀行口座が凍結されてしまう3つの理由と、その解除方法について紹介します。
銀行口座が凍結される3つの理由
銀行口座が凍結される3つの理由について詳しく説明します。
■債務整理
カードローンなど、銀行からの借り入れによる借金で債務整理をした場合、対象の銀行口座が凍結され、残額がすべて差し押さえられてしまいます。法人の場合は、法人の代表者の口座も凍結されます。
債務整理には、任意整理、民事再生(個人再生)、自己破産の3つがありますが、ほぼすべてのケースで銀行口座が凍結されてしまいます。ただし任意整理のみ、債務整理の対象に銀行の借り入れを含めなければ、その銀行の口座凍結を避けることができます。
ただし、口座凍結は弁護士などが送る受任通知が出されてから行われますので、事前に預金を引き出して口座を空にしておくことも可能です。弁護士の指示に従うのが良いでしょう。
■預金者の死亡時
銀行に預金者の死亡が伝わると、直ちに口座が凍結されてしまいます。預貯金も故人の相続財産なので、トラブルを避けるためにも、相続手続きが終わるまでは本人以外が引き出せないようにするのです。
死亡直後にすぐ凍結されるわけではなく、通常は親族が銀行へ報告することで凍結されます。その他にも、新聞の訃報欄から情報を得て家族へ確認の連絡が行くこともあります。
手続きには、故人のすべての戸籍謄本、遺産分割書、相続人全員の戸籍謄本や印鑑証明などが必要となります。
■不正に譲渡・使用された口座
警察からの情報提供により、犯罪に使用された疑いのある口座は、捜査や犯罪抑止のために凍結されてしまいます。
闇金など悪質な金融業者の借り入れ条件として、口座情報を要求されることがあります。そこで口座情報を教えてしまうと、振り込め詐欺などの犯罪に利用されてしまい、不正な口座として凍結されてしまうのです。
また健康保険証や運転免許証など身分証明書の盗難にあうことで、不正な口座が開設されてしまい、同名義の無関係な口座まで凍結されてしまうケースもあります。
犯罪には全く関係ないのに、ある日突然口座が使えなくなることもあるのです。
口座が凍結されるとどうなるのか
口座が凍結されるとどのようなことが起きるのでしょうか。厄介なのは、犯罪利用を疑われて口座が凍結されてしまった場合です。
■一切の取引ができなくなる
口座が凍結されると、預金の引き出しはもちろんのこと、給与の振込、公共料金の引落などあらゆる取引ができなくなってしまいます。
一度凍結されると、債務整理の場合には代位弁済などの手続きが完了するまでの約1~3ヶ月間、預金者死亡の場合には必要書類が揃うまで、犯罪利用の場合にはそのまま強制解約になってしまうこともあります。
■同銀行の他口座もすべて凍結される
ある銀行の口座が凍結されると、同じ銀行の別支店で開設している同名義の口座も使用できなくなります。また、犯罪利用が疑われる場合には、他銀行の同名義の口座もすべて凍結されてしまう可能性もあります。
■新たに口座開設できなくなる可能性がある
一度でも自分名義の口座が犯罪に利用されてしまうと、銀行のデータベースに情報が公開されてしまうため、今後一切銀行口座の開設ができなくなってしまう可能性があります。口座を持てないと、就職に支障をきたし、給与や年金などの振込を受けられないなど社会生活に大きく影響します。
過去に、銀行のブラックリストに載っている元暴力団組員が、口座開設のために改名を申請したところ、家庭裁判所に認められたことで話題になりました。
なお債務整理の場合には問題なく開設が可能ですが、数年間は新たにローンを組むことはできなくなります。
口座凍結の解除方法
債権整理や相続手続きのための口座凍結は、所定の手続きを終わらせさえすれば、解除することができます。また、凍結中に預金がなくなることもありません。
しかし犯罪に利用されたと疑われる口座については、解除が困難である上に、一定期間を過ぎると債権が消滅してしまいます。
■各種手続きを終わらせる
債務整理の場合には、銀行の保証会社が代位弁済を終えることで解除されます。大体1~3ヶ月の期間を要します。また自己破産により免責となった場合にも、凍結が解除されます。
預金者死亡により凍結された場合でも、銀行所定の書類を揃えることで、解除されます。遺言書の有無や、遺産分割協議書の有無によって必要な書類が変わってきます。
銀行によって異なりますが、一般的には下記のような書類が必要となります。
預金者死亡による口座凍結解除のために必要な書類の例 ・銀行所定の相続届(相続人全員の署名と押印) ・戸籍謄本 ・(あれば)遺産分割協議書や遺言書 ・法定相続人全員分の印鑑証明書 ・預金通帳など |
■権利行使の届け出を行う
犯罪に利用された、またはその疑いがあることが原因で口座を凍結された場合、解除の手続きは非常に困難となります。口座の取引が停止すると、預金保険機構のホームページ上で預金口座の権利消滅の公告がなされます。
http://furikomesagi.dic.go.jp/sel_pubs.php(振り込め詐欺救済法に基づく公告-公告一覧)
60日以内に各金融機関へ権利行使の届け出を行わないと、口座の権利が消滅し、預金は犯罪被害者への資金分配のために使われてしまいます。
しかも届け出をしたからといって必ず解除されるわけではなく、実際には、捜査機関や金融機関との協議や訴訟を通して決められていきます。
60日を過ぎて権利を失ってしまった場合でも、届け出をできなかったやむを得ない理由があり、犯罪口座でないことについて相当の理由があれば、預金の債権分の額の支払を請求することができます。
いずれにせよ捜査機関への問い合わせや金融機関との交渉が必要となるので、法的な知識がない人にとっては非常にハードルの高い手段となります。
■民事訴訟を起こす
凍結口座を解除する手段の一つとして、民事訴訟があります。口座の凍結をしている銀行を相手取り、預金の返金請求を行います。
例えば相続手続きが難航していて、いつまでたっても凍結が解除されないような場合には、銀行に対して法定相続分の払い戻し請求が可能です。
不正利用疑いのある口座凍結に関しても、交渉や協議だけでは結論が出ず、最終的には訴訟によって解決するしかないケースもあります。何らかの結論を得るには、訴訟などの法的手段に訴えることも必要となってきます。
■弁護士に依頼する
どんなケースでも銀行口座が凍結されたら、まずは弁護士に相談することで早期解決を図ることができます。
債権整理や相続手続き自体も弁護士が行ってくれるため、口座凍結にも焦らず対応が可能となります。相続に関しては、事前に弁護士へ遺言書の作成を依頼することで、凍結解除手続きも短縮することができます。万が一訴訟に発展しても、引き続き弁護士に手続きを任せることができます。
不正利用疑いのある口座凍結に関しても、弁護士を通じて解除の働きかけを行うことで、難航していた状況が前進することもあります。
まとめ
突然の口座凍結に焦らないためにも、債務整理は弁護士と連絡を取り合いながら、そして相続手続きは生前に遺言書を作成しておくなど計画的に行いましょう。
不正利用疑いのある口座の凍結に関しては、現状では巻き込まれてしまった人を救済するためのガイドラインが整っていません。困難となることが予想されますが、弁護士による交渉や訴訟によって凍結解除できる可能性が高まります。身に覚えのないことで口座が凍結されてしまった場合には、弁護士へ助けを求めましょう。