最近では、様々なインターネットサービスやアプリを通じて、個人間での売買取引や物々交換が盛んに行われています。顔が見えない相手との取引は、個人のモラルに寄るところが大きく、悪意の有無に関わらず多くのトラブルが発生してしまいます。
また、商品のやり取りを仲介している業者は、あくまで取引の場を提供しているだけで、個人間のトラブルに深くは関わらないというスタンスのところも多いようです。まさに自己責任の元、リスクを理解して上手に利用することが求められてきています。
買い主側が巻き込まれるトラブル
個人間の取引の場合、売り手は事業者ではなく個人のため、消費者生活センターへ相談しても個人間のトラブルであるとして受け付けてくれません。
買い主側が巻き込まれてしまうよくあるトラブルと対策について下記にまとめてみました。
■商品が届かない
一方が商品や現金を送ったのに、相手側から商品が届かないというトラブルです。相手はすでに退会してしまっていて、連絡が取れないという状況に陥ってしまうこともあります。
【対策】
まずは取引の仲介を行っている運営会社へ相談しましょう。返金など何らかの補償を設けていることもあります。
最近ではエスクローサービスという、個人契約の間に業者(運営会社)が入るシステムも普及しています。契約が成立した時点で、エスクロー業者が買い主から代金を一時的に預かり、買い主に商品が届いた時点で売り主に支払う、というシステムです。
買い主は商品が届かないというトラブルを避けることができ、売り主は代金が支払われないというトラブルを避けることができます。
ただし、エスクローサービスの利用には手数料(商品代金の10%など)がかかりますので、実際には売り主には、買い主の支払代金から手数料を差し引かれた額が支払われています。売り主と買い主のどちらが手数料を負担するかは、使用するサービスによって決められていますが、それ以外の場合には個人間で決めておく必要があります。
個人間での解決が必要な場合には、弁護士へ相談してみましょう。弁護士名義で内容証明郵便を送るなど、法的手段をも辞さないことを相手に知らせるのも効果的です。
また、事前に取引相手の実績の確認を行い、信頼できそうかを見極めましょう。可能であれば相手の住所、電話番号など、相手の身元を確認できる情報を得ておくと万が一のときに役立ちます。
■不良品が届いた
商品は届いたが、事前の情報とは違う欠陥がみつかった、または偽物が届いたというトラブルも多数あります。特に中古品の取引の際には、瑕疵担保責任の免除を表す「ノークレーム・ノーリターン」という特約を記載することにより、返品を拒否される場合も出てきてしまいます。
【対策】
「ノークレーム・ノーリターン」特約は、いかなる場合でも有効となるわけではありません。売り主が商品の瑕疵を知っていながらそれを告げなかった場合には無効となり、売り主側に瑕疵担保責任が発生します。契約解除や損害賠償の請求が可能となります。
仮に売り主が瑕疵を知らなかったとしても、商品として致命的な欠陥があるなど個別の事情によっては「ノークレーム・ノーリターン」特約が無効となることがあります。
また、エスクローサービスを取り入れている業者であれば、商品の受取を拒否することで取引をキャンセルすることができます。
いずれにせよ、事前に商品に関する不明点を明らかにした上で取引を行うことが必要です。悪質な場合には、運営会社に報告しましょう。
■郵送や配達のトラブル
配達の途中で商品を紛失してしまった、または配達時にできたと思われる傷がついてしまっているなど、配送のトラブルも発生しています。
多くの場合で運営会社は不干渉となりますので、当事者間で直接やりとりをする必要があります。安価な取引の場合には、送料を抑えるために追跡サービスや紛失補償のない方法で配送してしまうことも、トラブルが増える原因となっています。送っていないのに送った、逆に届いているのに届いていない、という詐欺まがいなことも可能になってしまうのです。
【対策】
送料は買い主が負担することが多くなりますが、できるだけ追跡サービスや紛失保障のある配送方法を選択した方が良いでしょう。
送料が商品の代金を上回ってしまうような場合には、利益を得るために定形・定形外郵便のような安価な方法を選ぶことが多くなりますが、相応のリスクがあることも念頭に置いておかなければなりません。
売り主にとってもリスクを減らすことに繋がりますので、予めオプション付きの配送方法を取引条件にしておくのが良いでしょう。
売り主側が巻き込まれるトラブル
トラブルに巻き込まれるのは買い主だけでなく売り主側にもいえる問題です。
■理不尽なクレーム
事前に商品の説明に傷や汚れがあることを記載しているのにも関わらず、傷や汚れを理由に返金を要求する、または壊れていないはずなのに、壊れているから返金しろという買い主のクレームも増えています。
特にエスクローサービスを取り入れている場合、システム上、買い主の受取確認後の入金になるため、買い主の納得が得られない限りは取引が進みません。場合にはよっては悪い評価がついてしまったり、ペナルティとしてアカウント停止になってしまったりすることもあります。
【対策】
エスクローサービスは、売り手側からすると後払いのようなシステムになります。商品は手元にない、売上も受け取れない、という不利な状況をいつまでも続ける必要はありませんので、トラブルが起きた場合には速やかに返品の手続きを求めるのが良いでしょう。
事前に、詳細な商品の状態、返品の可否、返品の際の送料負担についてなどを丁寧に記載しておき、買い主の了承を得た上で取引を行いましょう。十分なコミュニケーションを取り信頼を得ることも、トラブル抑止には大切です。
それでも不当なクレームがある場合には、運営会社に相談してみましょう。冷静に誠実な対応を心がけていれば、仲介に入ってくれることもあります。
■悪意のある評価がついた
商品へのクレームとともに多いのが、買い主の悪意のある評価です。正常に取引が終わったはずなのに、悪い評価をつけられることがあります。または以前悪い評価をつけたことのある利用者に、お返しとばかりに不当に悪い評価を受ける報復評価なるものもあります。
悪い評価はアカウントの信用度にダメージを与えますので、次の取引にも支障が出てきてしまいます。
【対策】
明らかに不当な評価である場合には、運営会社に相談してみましょう。メッセージの履歴を元に判断されることもあるため、丁寧な対応を心がけましょう。相手に悪質性が認められた場合には、何らかの対応してくれる可能性もあります。
また、信頼のおける相手としか取引をしないなど、予め取引相手の選別を行うことも大切です。
トラブルに巻き込まれないために
トラブルが起きた場合には、まずは運営会社に相談して対応を仰ぐのが基本ですが、必ずしも対応してくれるわけではありません。個人間の取引は、自己責任が大前提です。上手に利用するためには、常にリスクが起こりうることを頭に入れておくことが大切です。
トラブルに巻き込まれないためには、下記のような対策を取りましょう。
トラブルを避ける8つの対策 ・事前に取引相手のプロフィールをチェックする ・高価な取引や、逆に不自然に安価な取引は避ける ・できるだけ相手の電話番号や住所を得ておく ・配送の控えなど、取引の際に出た証拠は捨てずにとっておく ・冷静で丁寧な対応を心がける ・コミュニケーションを十分に取る ・エスクローサービスの場合には、受取前の評価など、決められた手順に逆らった取引をしない |
どうしても自分一人では解決できそうにないという場合には、弁護士へ相談してみることをおすすめします。