「シャチハタ以外の認印」と言われたとき、あなたならどのような判子を思い浮かべますか?インクのないタイプの判子?三文判?そもそも認印とはどのようなものか理解していますか?
判子に関する表現はややこしく、実はよくわからないまま社会生活を送っている人もいるのではないでしょうか。いざということきに困らないためにも、判子の種類についてキチンと知っておきましょう。
今回は、シャチハタ、認印、実印の3つの違いの他、関連した表現として三文判や銀行印についても簡単に解説していきます。

シャチハタとは
シャチハタは、一般的に朱肉がいらないゴム製のインク浸透印のことを指します。判子メーカーのシヤチハタ社が由来であり、社名がそのままインク浸透印の代名詞として使われています。ステープラーがホッチキス、セロハンテープがセロテープとして広まっているのと同じことですね。
■シャチハタの特徴
シャチハタは別名スタンプ印ともよばれ、スタンプのように朱肉なしで手軽に押印することができます。しかし印面にはゴムが使用されているので、押す強さによって印影が変わったり、経年で変形してしまったりすることがあります。インクも消えやすく、永年使用することが難しいため、長期に保管する必要があるような公的書類や、本人確認が必要な重要書類への使用には適していません
■主な用途
シャチハタは、使用頻度の高い日常的な書類や確認印として使用されます。
シャチハタの主な用途
・郵便物や回覧板の受領印
・社内書類の確認印
・申込書
三文判とは シャチハタと混同されやすいのが、三文判です。三文判とは、大量生産されている出来合いの安価な判子全般のことをいい、特定の判子の形状や用途を指す言葉ではありません。「三文判で可」という表現は、つまり安物の判子で問題ないということです。 市販されており、誰でも簡単に手に入れることができるシャチハタは、三文判の一種ともいえます。例えば、「シャチハタ以外の三文判」と指示された場合には、朱肉が必要なタイプの判子を使用すれば良いということになります。100円ショップに売っているような安価なプラスチック素材のものでも構いません。 |
認印とは
一般的には、認印=普段使いの判子という意味で使われますが、厳密に言うと、認印とは実印以外のすべての判子を指す言葉です。実印は市役所で印鑑登録をした唯一無二の判子のことをいい(次項で詳しく説明しています)、それ以外の判子はすべて認印に分類されることになります。
定義上では実印と認印は兼ねることができませんが、物理的には可能です。仮に認印として実印を使用しても、他人にはそれを区別することができないからです。しかし偽造や紛失のリスクを考えると、別々の判子で使い分けるのが良いでしょう。
■認印の特徴
認印として使用される判子に、特定の条件はありません。シャチハタをはじめとした三文判や、オーダーメイドの高価な判子も、印鑑登録さえしていなければすべて認印となります。丸でも四角でもイラストが入っていても、認印として使っているのであれば、それが認印となります。ただし一般的には氏名の一部が含まれているものが使用されており、認印として認められる範囲は、使用する場面や受け取る相手側によって変わってきます。
■主な用途
認印は、実印が使用されるような重要な契約を除く、日常的な用途からビジネスシーンまで、幅広い場面で使用されます。
認印の主な用途
・個人向けの契約書
・企業間の契約書の担当者印
・各種申請書
・訂正印
・銀行印(実印と兼ねていない場合)
銀行印 銀行印とは、金融機関へ登録している判子のことであり、口座取引の際に必要となる重要なものです。銀行印も印鑑登録していないものであれば認印に分類されます。ただしセキュリティの問題上、普段使いの認印として銀行印を使用することはなく、一般的には別々の判子を準備します。 銀行印の条件ですが、印影が変わってしまうと認証できなくなってしまうので、シャチハタなどのゴム印は登録できませんが、逆に永年使用できる素材であればどんな印刻内容でも構いません。中にはあえて自分の名前以外のものや、イラストのみの判子を使用する人もいるようです。これが銀行印と決めてしまえば、規定上ではどんなものでも銀行印として登録することができるのです。ただし金融機関の管理体制によっては拒否される場合もあります。 |
実印とは
実印とは、住民票がある地域の市役所で印鑑登録手続きをした判子のことを指します。自分で(または代理人によって)登録した人のみが持っているものであり、必ずしも全員が持っているものではありません。
印鑑登録は、その地域に住民登録しており、かつ15歳以上の成年被後見人以外の人であれば可能です。外国籍の人の場合には、外国人登録法による登録を受けている必要があります。また、本人による手続きだけでなく、委任状を持った代理人によっても登録ができます。
一人につき一つの判子だけ登録することができます。手続き後に印鑑登録証(カード)が発行され、以降この印鑑登録カードを使って印鑑登録証明書が発行できるようになります。
なお引っ越しをした場合には、都度印鑑の再登録が必要です。
■実印の特徴
実印は、銀行印や認印とは異なり、所定の様式が定められています。地方自治体ごとに条件は異なりますが、一般的な登録印の条件は下記のとおりです。
実印の特徴
・一辺の長さが8~25mmの正方形に収まるもの
・住民基本台帳に登録されている氏名、氏または名、氏と名の一部を組み合わせたもの
例)木村拓哉→◯木村拓哉、木村、拓哉、木村拓、木拓
✕キムタク、弁護士木村拓哉
・「〇〇之印」「〇〇印」「〇〇之章」もOK
・変形しにくい素材のもの(ゴム印不可)
・外枠があるもの
・逆彫りでないもの
・手掘りのものなど、大量生産されていないものが望ましい
※地域によってルールが異なります。詳しくは各自治体のホームページなどで御確認下さい。
■主な用途
実印は、多くの場合で印鑑登録証明書とのセットで用いられます。印鑑登録証明書は、コンビニや市役所で1枚200円~300円程で発行することができます。
実印や印鑑登録証明書が求められるのは、下記のように家や車を買うときなど大きな取引をする場面です。実印が押されていることで、確かに本人が押印したという証明にもなります。
実印の主な用途
・不動産を売却するとき
・各種ローンの契約者本人や連帯保証人になるとき
・不動産賃貸借契約の連帯保証人(ときどき契約者本人)になるとき
・自動車の売買(名義変更)をするとき
・採用者の身元保証人になるとき
・公正証書を作成するとき
・会社を設立するとき
・保険金を受け取るとき
・相続で遺産分割協議書を作成するとき など
シャチハタと認印と実印の違い
判子は市役所への届け出の有無で認印と実印に大分されます。さらに別で銀行へ登録している判子を銀行印といい、認印や実印を兼ねることもできますが、普通はそれぞれ別のものを使用します。
実印には、材質的な条件と印刻内容に制限がありますが、認印にはありません。銀行印には材質的な制限はありますが、印刻内容の制限がありません。それぞれの条件に合わせて、普段使い用の認印、銀行印、実印の3つの判子を持つことが一般的です。
シャチハタは材質の特徴を示した言葉であり、朱肉の要らないゴム製の判子のことを指します。ゴム印は銀行印や実印としては使えないため、使用用途は普段使い用の認印に限られてきます。
また三文判は、どこにでも売っているような出来合いの判子のことであり、防犯上認印として使用されるのが一般的ですが、条件さえ満たしていれば銀行印や実印として登録も可能です。
まとめると下記のようになります。
認印 | 銀行印 | 実印 | |
登録先 | なし | 銀行 | 市役所 |
材質・品質 | ○シャチハタ ○三文判 |
✕シャチハタ △三文判 |
✕シャチハタ △三文判 |
印刻内容 | 条件なし | 条件なし | 氏名や氏名の一部 |
シャチハタ以外の名前入り判子が一つあれば、すべての用途を賄うことは可能ですが、万が一無くしてしまったときのダメージは大きく、紛失の手続きも面倒になります。認印・銀行印・実印は別々の判子を持つようにし、紛失時や盗難時のリスクをできるだけ減らせるようにしましょう。