年間約7,000名の人たちが自分の名前を変えるための手続きを行っています。事情は様々でしょうが、その多くは名前に耐え難い問題を抱えている人々による申請であることが想像されます。
しかし誰もが好き勝手に改名できるわけではなく、実際に変更が認められるためには裁判官の納得が得られる正当な理由が必要となります。
では、具体的にどのような条件下で改名が認められるのでしょうか。
社会生活に支障を及ぼしているかどうか
名前は個人的な理由で好き勝手に変えられるものではありません。改名するためには、家庭裁判所へ申請をして、許可を得る必要があります。年に7,000件ほど出される申請のうち、約7割が認容されています。残り3割は、申請を自分で取り下げたか、または裁判所の定める条件を満たさずに却下されています。
改名の許可が下りる条件として、現在の名前によって社会生活に支障を及ぼしているかどうかが考慮されます。
具体的には、次のような条件で認容されています。
■奇妙な名前である
読みづらい、名前とわからない、いじめや差別を助長するような名前である場合です。いわゆるキラキラネームも珍名・奇名を理由として改名できる可能性があります。
■職業上や宗教上の改名
老舗の商家など、当主就任とともに代々伝わる世襲名に改名する慣習がある場合です。職業上の襲名は、歌舞伎役者とは異なり戸籍上の名前まで変えることに特徴があります。
または、僧侶や神官になるために改名する必要がある場合にも認容されます。
■身近に同姓同名者がいる
婚姻をきっかけに親族内や隣近所で同性同名になってしまった場合などが考えられます。郵便物の誤送が頻発するなど、社会生活に支障を及ぼすと判断されます。
また有名な犯罪者と同姓同名である場合でも、風評被害を避けるために改名が認容されることもあります。
■永年使用している通称名がある
通称名を長年使用している実績があれば、通称名を本名として認められる可能性が高くなります。「永年使用」といって、改名の理由としてもっとも認められやすい条件となります。
■国籍や性別に誤解を招く可能性がある
日本に帰化したために日本風の名前にしたい、性転換により性別にあった名前に変えたいといった場合にも改名が認められます。
■出生届が誤っていた
そもそも出生届を誤った漢字で届け出てしまった場合、修正を認められる可能性があります。
■過去の経緯から支障を及ぼす
名前自体に問題はないが、名前をきっかけに精神的苦痛を呼び起こすような特別な事情がある場合には、改名が認められることがあります。例えば、幼いころに虐待を受けていて名前を呼ばれるたびに精神的な苦痛を伴うようなケースです。
何度もチャレンジ可能
自分の申請が正当な理由として認められるかどうかは、申請した家庭裁判所の裁判官の主観に委ねられてしまいます。
却下されてしまっても再申請は可能ですが、同じ理由で申請してもおそらく結果は変わらないでしょう。別のアプローチから申請することもできますが、最も確実なのは通称名の永年使用の実績を作ることです。3~10年ほど通称名で生活を送った実績を示すことで、正当な理由として認められやすくなります。年齢が若いほど、短期間で認められる傾向にあります。改名の実現には、早期からの準備が必要となるのです。
何度申請しても通らない、前例がないような特殊な事情がある、手続きが不安な場合などには、弁護士へ相談してみましょう。