離婚時に子供がいた場合、親の一方には親権が渡り、もう一方には養育費の支払い義務が発生します。子供を産んだ親としての責任は、離婚関係なくあり続けるものなのです。
養育費の具体的な支払条件は、夫婦の話し合いによって決められていきますが、交渉がうまくいかない場合には、調停、審判、最終的には裁判にまで発展することもあります。
長期化すればするほど費用もかかりますので、交渉前や弁護士相談前に、養育費についての知識を得ておくことは大切です。今回は、養育費がどのように決められていくのかを簡単に紹介します。
養育費の対象
まず養育費の支払対象となるのは、未成熟子とされる経済的に自立していない子供です。未成熟子は年齢によって定義されていないため、具体的に何歳までという決まりはありませんが、一般的には次の3つの時期を区切りとしています。
養育費の終わりの時期=未成熟子の終期
・高校卒業まで
・成人まで
・大学卒業まで
子供が高校卒業にすぐに働き始めるのか、大学進学を予定しているのかは、家庭によって事情が異なるため、基本的にはいつまでを対象とするかは夫婦の話し合いによって決められることになります。
大学進学について争いとなった場合には、子供の意思、兄弟や両親の学歴、家系、収入などによって大学進学が相当か判断されることになります。
なお、子供がすでに成人している場合には、養育費ではなく扶養費として、子供本人による請求が可能となります。
養育費の支払方法
養育費の支払方法に決まりはありませんが、一般的には子供名義の口座へ月々の支払いとなります。
双方の同意があれば、年払いや一括支払いの取り決めも可能です。
特に支払義務者が経済的に不安定な場合には、金額を抑えてでも一括支払いとするのが望ましいとされます。最も支払いが確保できる方法を選択しましょう。
養育費の金額設定
養育費の金額についてもそれぞれの裁量によって決められていきますが、計算にはかなりの時間を要することと、案件ごとにかなりの差異が出てしまっていることから、一つの基準として裁判所による算定表が公表されています。
■基準となる算定表
養育費・婚姻費用算定表(裁判所)
http://www.courts.go.jp/tokyo-f/vcms_lf/santeihyo.pdf
夫婦の双方の年収、収入形態(自営又は給与)、子供の年齢(0~14歳又は15歳~19歳)、子供の人数(1~3人)ごとに算定されています。
2016年には、さらに修正したものとして日弁連の算定表が公表されています。
裁判所の算定表は10年以上前に公表されたものであり、税制や料率についても当時の基準のままとなっています。日弁連の算定表では、税制や税率などを現在のものに修正している他、より実態に則した形で経費の扱いを見直しています。
その結果、全体的に算定額が上がっており、子供の年齢もより細かく(0~5歳、6~14歳、15~19歳)分けて算出されています。
■具体例
裁判所の算定表と日弁連の算定表を使って、下記のケースの養育費を算定してみます。
夫:義務者(支払う側) 年収514万円(男性平均年収)
妻:権利者(受け取る側) 年収272万円(女性平均年収)
二人とも給与所得者であり、子供を一人とすると、月あたりの養育費は下記のようになります。
2つの養育費算定表比較
子供の年齢 | 裁判所基準 | 日弁連基準 |
0~5歳 | 2~4万円 | 8万円 |
6~14歳 | 8万円 | |
15~19歳 | 4~6万円 | 9万円 |
上記を比較すると、やはり全体的に日弁連の方が高額となっており、権利者にとって有利な基準であることがわかります。しかし裁判所の算定表は現在でも主流な基準として用いられているため、日弁連の金額を主張するためには相応の根拠が必要です。
だたし裁判表の算定表も日弁連の算定表も、あくまで一つの指標に過ぎないため、実際には個別の事情に応じて額が設定されていくことになります。
条件を書面化する
条件がある程度定まったら、必ず書面化をしましょう。養育費は長期に渡る契約です。離婚当初は支払い意思がみられたとしても、数年後には支払が滞ってしまうこともめずらしくありません。
支払を確保する方法として有効なのは、離婚公正証書として残すことです。支払いが滞った時点で直ちに強制執行手続きが可能なので、義務者へのプレッシャーにもなります。
公正証書についての詳細は「最強の証書、公正証書の効力とは」を御覧ください。
養育費は子供の将来のために必要なものです。自分で知識を得た後には、弁護士へ相談するなど万全な体制で挑みましょう。