連帯債務と連帯保証は、本来の債務者以外の第三者にも債務を負わせる人的担保の一種です。書面によって請求先を増やすことができる、債権者にとって債権回収確率を高める有効な方法です。
連帯債務と連帯保証の違いとメリット・デメリットについて、相対効と絶対効の観点で説明します。
連帯債務者同士の影響とは?絶対効と相対効について①の続きとなっています。
連帯保証と連帯債務の違いについて
複数の人が一つの債務を負担する方法に、連帯債務と連帯保証というものがあります。そのうち連帯保証は、主たる債務者とその保証人が連帯して一つの債務を負うことになり、債権者は、債務者と連帯保証人どちらに対しても全額請求可能です。
連帯債務との違いとして、連帯債務の債務者同士が対等な関係であるのに対して、連帯保証の主たる債務者と連帯保証人は従属の関係にあります。主たる債務者に生じた事由については、絶対効として連帯保証人へも影響を及ぼしますが、連帯保証人に生じた事由については、相対効となります。
主たる債務者→連帯保証人・・・絶対効
連帯保証人→主たる債務者・・・相対効
例えば、AさんがBさんに1,000万円を貸し付け、連帯保証人としてCさんとDさんをたてたとします。それぞれの影響範囲について下記で説明します。
■期限の猶予
AさんがBさんに支払期限の猶予を与えた場合、連帯保証人のCさんもDさんも同様に猶予を与えられることになります。しかしAさんがCさんに猶予を与えても、BさんやDさんには影響を及ぼしません。
■取り消し、無効
またもし主たる債務者Bさんが未成年であるとして契約取り消しになった場合、連帯保証人CさんDさんの契約も取り消しとなります。連帯保証人のDさんの契約が取り消しになっても、BさんやCさんには影響を及ぼしません。
■債務承認と時効の完成
主たる債務者BさんがAさんに1円でも返済したり期限の猶予を求めたりすると、債務の存在を承認したとみなされ時効が中断しますが、連帯保証人のCさんが債務承認を行っても、Bさんの時効は中断しません。しかしBさんの時効が完成した時点でCさんDさんの時効も完成することとなりますので、債務承認による時効中断はBさんに対して行わなければあまり意味がありません。
つまり連帯保証人から返済を受けているからといって、主たる債務者から債務の承認を受けないままでいると、いつの間にか主たる債務者の時効が完成し、債権が消滅してしまうのです。
そのため債権者の立場としては、絶対効の恩恵がある主たる債務者に対して主に請求を行います。
■連帯債務と連帯保証の違い
連帯債務 | 連帯保証 | ||
連帯債務者の一人に起きた場合 | 主たる債務者に 起きた場合 |
連帯保証人 に起きた場合 |
|
期限の猶予 | 相対効 | 相対効 | 相対効 |
無効・取り消し | |||
債務承認 | |||
時効の完成 | 負担額のみ絶対効 | ||
免除 |
弁済、相殺、請求、更改、混同については、連帯債務と同様、お互いに絶対効となります。
■連帯保証人の求償権について
連帯保証人が全額弁済した場合、主たる債務者に全額求償することができます。また、連帯保証人が複数人いる場合、連帯保証人同士でも自分が負担すべき額を超えて支払った額だけ求償可能です。
連帯債務と連帯保証のメリットとデメリット
連帯債務と連帯保証は、どちらも債権者に対して全額負担の義務がある点で共通しています。ではこれら2つはどのように使い分けられているのでしょうか。
■連帯債務が適している場合
債務者が契約取り消しや無効となる恐れのある場合、その影響の及ばない連帯債務が適しているといえます。また全員が債務者であり、一人ひとりに必ず負担部分があるため、返済義務の意識が大きくなる傾向にあります。
■連帯保障が適している場合
主たる債務者の契約についての絶対効が多いため、それぞれ独立した契約である連帯債務よりも管理が簡潔になります。
ケースによってメリット、デメリットどちらにもなりうるため、上記の限りではありません。債権者や債務者の事情など様々な要素が絡んで複雑となってきますので債権回収や債務契約については弁護士などの専門家に相談すると良いでしょう。
そして責任の度合いではどちらも変わらないため、できれば連帯債務者、連帯保証人どちらもならない方が良いことは確かです。