2月20日、インターネット上の記事や投稿の削除代行を請け負う都内の会社に対し東京地裁は「非弁行為」にあたるとして約50万円の依頼費返還を命じました。誹謗中傷対策として記事削除を行っているインターネット系の企業は多くありますが、違法であるとの判断が下されたのは今回が初めてのケースとなります。
違法とされる非弁行為とは、一体どのようなものなのでしょうか?日常で行われている行為も、実は非弁行為にあたるかもしれません。
非弁行為とは
弁護士の業務は、弁護士資格を持つ人にのみ認められています。弁護士資格を持っていない人が、報酬を目的として繰り返し法律業務を行う、又は弁護士を紹介することを非弁行為といい、法律で禁止されています。違反した場合、2年以下の懲役又は300万円以下の罰金となります。
報酬目的かつ繰り返し行う必要がありますので、例えば知人のために好意で弁護士を紹介する行為は非弁行為にはあたりません。
ここでいう法律業務とは、法律に関する事件についての相談を受けたり、代理人を務めたり、交渉を行ったりすることです。また報酬は金銭だけでなく物品やサービスも含みます。
弁護士以外による法律行為すべてが禁止されているわけではなく、例えば認定司法書士には簡易裁判所管轄事件に限って代理人が認められるなど、隣接士業に一部の法律業務を許可している場合もあります。また労働組合が企業に対して団体交渉を行う行為も権利として認められています。
非弁行為の具体例
その他禁止されている非弁行為の具体例として次のものがあります。
■債権回収
取り立て屋などが報酬を受けて債権者の代わりに債権回収行為を行うことは非弁行為です。ただし法務大臣に認定を受けた一部の業者は、債権者から買収した債権についての回収業務は営利目的で行っても良いとされています。
■立退き交渉
不動産業者などが、マンションの大家さんから依頼を受けて賃借人の立退き交渉を行うことは非弁行為にあたります。報酬をもらうかもらわないかがポイントとなりますが、立ち退き料という名目でなくても仲介手数料などが発生していれば報酬とみなされ、非弁行為であると判断される可能性が高くなります。
■交通事故の示談交渉
弁護士以外の業者が、依頼を受けて示談交渉を行い、報酬を受けることは非弁行為となります。
■遺産分割協議
弁護士以外の士業者などが、遺族に対して遺留分の説明を行ったり遺産分割に関する協議の代理人として交渉を行ったりすることは非弁行為となるため禁止されています。
依頼者の不利益を防ぐために
非弁行為は、依頼者保護の目的で禁止されています。依頼者が、誤った法律行為によって不利益を受けることを防ぐために作られた制度なのです。弁護士でない人が行った法律行為はすべて無効となってしまいます。費用の返還請求は可能ですが、費やした時間は戻ってきません。権利関係にまつわる法的トラブルはまずは弁護士へ相談しましょう。また、手段を選ばない取り立てや立退きなど非弁行為の疑いがある際にも、弁護士への相談が有効です。