公証人という職業をご存知ですか?
遺言書や離婚契約書作成、会社設立時の定款認証など、人生に一度あるかないかのライフイベントの際に活躍するのが公証人です。公証人が関わる多くの手続きは、弁護士や行政書士を通して行われるため、わたしたちにとってはあまり馴染みのない職業となっているのです。
今回は法曹界でも人気職といわれている公証人について紹介します。
公証人とは
公証人は、裁判官・検察官・弁護士などの法曹有資格者や法律実務家の中から、法務大臣によって任命される広義の国家公務員です。ただし国からの給与制ではなく依頼人からの手数料が収入源である独立採算制であるという点で通常の国家公務員とは異なっています。事務員の給与や地代家賃も自ら支払う自営業者なのです。
■公証人になるには
公証人になるには、公証人試験合格、法曹からの任命、学識経験者からの任命の3つのルートが存在します。しかし実際に公証人として活躍しているのは法曹からの任命によるものがほとんどです。実務経験が30年以上あることが条件となるため、公証人の多くは高齢であることが特徴です。
なお副業は禁止されているため、任命された時点で士業登録があれば抹消しなければなりません。
公証人の業務内容
公証人は、官公庁の一つである公証役場にて業務を行っています。全国に約300箇所ある公証役場では、主に次の3種類の業務を請け負います。
■公正証書の作成
私法上の契約や遺言などの権利義務に関する証書の作成を行います。公証人の作成する公正証書には判決と同じ効力が認められるため、金銭債権に関する公正証書があれば裁判をすることなく強制執行を行うことができます。
公正証書には、遺言書の他、不動産賃貸借契約、金銭消費貸借契約、売買契約、離婚給付契約、任意後見契約などがあります。
■私文書や定款の認証
法人や個人の契約書が本人の意思によって正しく署名されていることを確認し、法的に有効な文書であることを証明します。公証人からの認証を受けることで、裁判の際に有効な証拠となります。
また法人設立時の定款認証を行います。公証人による認証がないと新規設立は認められません。
■確定日付の付与
文書に確定日付印を押すことで、捺印日の確定を証明します。文書の作成日付に関する争いとなったときに重要な証拠となります。
法曹界の人気職
公証人が作成、認証した書類は、公的に認められた正式な書類として扱われます。時には判決と同等の効力を持つ程に影響力を持った書類となるのです。それだけ重大な権力を与えられている公証人は、高度な知識と長年の経験による信頼が必要となります。
全国には約500名の公証人が在職しており、年間1名任命されるかされないかの狭き門となっています。また公証人の平均年収は高く、案件の多い都市部になると3,000万円を超えると言われています。そのため法曹界では非常に人気の職なのです。
しかしこれまで公証人試験は一度も実施されたことがなく、法曹からの任命が慣習となっています。実際に公証人の大多数を占めるのが定年後の裁判官や検察官、元法務局長であることから、法曹界の天下り先であるとの見方が強くあるのです。
とはいえどの公証人も知識や実力は間違いありません。地域によっては公証役場が少なく、気軽に行けない場合もあります。また手続きも馴染みがなく複雑であるため、よくわからないという方も多いはずです。基本的に公証役場での手続きは弁護士や行政書士が窓口となって代行してくれますので、お近くの事務所へ相談されてみてはいかがでしょうか。