士業のあれこれパート②です。
弁護士と弁理士って名前も似ていて紛らわしいですよね。今回は、弁護士と弁理士の違い、弁護士と税理士の違い、弁護士と社会保険労務士の違いについてまとめました。
弁護士の資格範囲について
弁護士は法律業務全般を扱うことのできるオールラウンダーです。弁護士の資格範囲は下記のとおりです。
弁護士資格の範囲
業務許可がある | 弁理士、税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士、海事補佐人、海事代理人 |
---|---|
資格登録可能 | 弁理士、税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士、海事補佐人 |
資格取得には別途試験が必要 | 司法書士、海事代理人 |
弁理士とは
弁理士は、アイデアやデザインなどの知的創作物の権利化や、逆に特許の取消又は無効とするための手続きの代理業務を行うなど、知的財産権に関する業務を行うことができます。
■弁理士になるには
弁理士になるには、弁理士資格を持った上で、日本弁理士会に弁理士登録をする必要があります。
弁理士資格は弁理士試験(受験資格問わず)に合格することで取得することができます。また弁護士資格を持っていることで弁理士資格を兼ねることができます。また、特許庁の審査官や審判官として7年以上業務を行っている場合でも資格を得ることができます。
■弁護士と弁理士の違い
弁護士も弁理士も国家資格です。通常訴訟代理人は弁護士の独占業務ですが、日本弁理士会より特定侵害訴訟代理業務試験に合格した旨の付記を受けた付記弁理士のみ、特許や商標などの知的財産権関係の訴訟代理人になることができます。ただし弁護士との共同受任が原則となります。単独での代理は行なえません。また、弁理士は裁判外紛争解決手続(ADR)の代理も務めることができます。
基本的に下記に記載している弁理士業務は弁護士も行うことができますが、知的財産関係の訴訟は新しい技術への理解が必要不可欠になってくるため、弁護士は専門性の高い弁理士と協力して訴訟を行うことになります。
弁理士業務
弁理士の専門分野 | ・特許、実用新案、意匠、商標などの知的財産権利化のための特許庁への出願手続きの代理業務 |
---|---|
付記弁理士に限ってできること | ・特定侵害訴訟(特許、実用新案、意匠、商標、回路配置、不正競争による営業上の利益の侵害)代理業務 |
弁理士ができないこと | ・上記以外の法的業務全般 |
税理士とは
税理士は、中小企業や個人のコンサルタントとして税務相談を受けたり、税金に関する各種申請、書類作成、不服審査手続き等を行ったりすることができます。
■税理士になるには
税理士になるには、税理士資格を持った上で、日本税理士会連合会に税理士登録をする必要があります。
税理士資格は税理士試験に合格し、2年以上の実務を行う必要があります。受験資格として、大学短大高専の経済学系・法学系学部卒業、その他学部であれば法律又は経済に関する科目を1つ以上修了、日商簿記1級又は全経簿記上級合格、3年以上の会計業務実務経験などが必要になります。
また弁護士資格と公認会計士資格を持っていることで税理士資格を兼ねることができます。また、23年以上税務署に勤務した国税従事者にも資格が与えられます。
■弁護士と税理士の違い
弁護士も税理士も国家資格です。下記に記載している税理士業務は弁護士も行うことができますが、税理士業務を主として行っている弁護士は少数です。
基本的に税理士業務は税理士が、それ以外の法的業務は弁護士が行っており、住み分けができています。税務訴訟時には、税理士は補佐人として出頭し陳述することができます。
税理士業務
税理士の専門分野 | ・税務代理 ・税務書類の作成 ・税務相談 |
---|---|
弁護士との共同出廷 | ・租税に関する訴訟の補佐人 |
税理士ができないこと | ・上記以外の法的業務全般 |
社会保険労務士とは
社会保険労務士は、企業の人事労務のコンサルタントとして人事労務に関する相談を受けたり、従業員の給与計算や社会保険手続きの代行を行ったりすることができます。
■社会保険労務士になるには
社会保険労務士になるには、社会保険労務士資格を持った上で、都道府県の社会保険労務士会を経由して全国社会保険労務士会連合会に登録をする必要があります。
社会保険労務士資格は社会保険労務士試験に合格し、2年以上の実務又は連合会主催の講習受講が必要になります。試験の受験資格として学歴、実務経験、所定の国家試験合格のいずれかの条件を満たす必要があります。また、公務員として10年以上労働社会保険法令に関する施行事務経験がある場合などは試験が免除されます。
また弁護士資格を持っていることで社会保険労務士としての資格を得ることができます。
■弁護士と社会保険労務士の違い
弁護士も社会保険労務士も国家資格です。
下記に記載している社会保険労務士業務は弁護士も行うことができますが、税理士と同じく両者は住み分けができています。厚生労働大臣の認可を受けた特定社会保険労務士は労働関係紛争の代理人となることができます。(ADR制度)
社会保険労務士業務
社会保険労務士の専門分野 | ・労働、社会保険に関する申請書作成及び手続きの代行 ・陳述の代理 ・労働関係紛争の解決促進、調停手続きの代理 ・帳簿書類作成 ・事業の人事労務に関する相談 |
---|---|
特定社会保険労務士に限ってできること | ・紛争目的額120万円以内の労働関係紛争の当事者代理 |
弁護士との共同受任/出廷 | ・紛争目的額120万円を超える労働関係紛争の当事者代理
・労働に関する訴訟の補佐人 |
社会保険労務士ができないこと | ・上記以外の法的業務全般 |
住み分けができている隣接士業
上記3士業は、比較的弁護士との業務住み分けが想像しやすいのではないでしょうか。
特に、税理士や社会保険労務士が一般の人にとって難解な行政手続きの手助けをすることに主な役割があるのに対し、弁護士は私人同士あるいは国を相手取った紛争解決に主な役割がある点で異なっています。
8士業の中で弁護士にだけ監督省庁がないように、弁護士は国家権力の及ばないところで職務を行うことができる士業なのです。