「イソ弁」「ノキ弁」「ケー弁」など・・・弁護士にも様々な呼び名があることをご存知ですか?
これらの言葉の意味を知ることで、また別の角度から弁護士業界を見ることができます。
勤務形態別での呼ばれ方
法律事務所の中には、事務所を経営しているトップ弁護士、雇われ弁護士、実は事務所の名前を借りているだけの弁護士など、外からはわからないだけで様々な弁護士が働いています。そんな弁護士たちを、弁護士業界では下記のように呼び分けているのです。
■ボス弁
ボス弁護士です。法律事務所の開設者や経営者のことを言います。雇用する側の弁護士です。
■イソ弁
居候弁護士の略。法律事務所に雇われて働く新人弁護士のことを言います。お給料をもらいながら弁護士事務所で経験を積むことができるため、このように通称されています。通常イソ弁を経て独立しボス弁へとステップアップします。
■ノキ弁
軒先弁護士の略。法律事務所の一部スペースを間借りして営業をしている弁護士のことです。事務所に雇われているわけではないので給料制ではなく、独立採算制型で業務を行います。事務所から依頼を請け負って一部報酬をもらうこともありますが、基本的には自分の弁護士活動によって利益を得る必要があります。
■タク弁
自宅弁護士の略。軒先を見つけられずに、自宅を事務所として営業を行う弁護士のことです。もちろん、何年もイソ弁として経験を積んだ後、立派な家屋を事務所として構えているようなタク弁もいます。
■ケー弁
携帯弁護士の略。事務所を持たずに、携帯一つだけで仕事を請け負う弁護士のことです。打ち合わせにはファミレスやカフェなど外部の施設が使われます。
役職別の呼ばれ方
事務所の中にも役職や階級があります。
■パートナー弁護士(ボス弁)
法律事務所の経営者・共同経営者のことを言います。一般企業でいうと、取締役や社長などマネジメント層にあたります。さらに、最上位のパートナーをシニアパートナー、出資者としてエクイティパートナー、業務執行のトップをマネージングパートナー、下位のジュニアパートナーなど、パートナーの中にも階級があり、大きな事務所ほど細分化されます。事務所によって様々な呼び方があります。
■アソシエイト弁護士(イソ弁)
イソ弁の言い方をかっこよく変えるとアソシエイト弁護士になります。法律事務所に雇われて働く新人弁護士のことを言います。企業で言う平社員のようなポジションです。特に3~4年以内の新人はジュニアアソシエイト、経験を積むとシニアアソシエイトと呼ばれるようになります。
経歴別の呼ばれ方
弁護士になるまでの経歴や社会属性にまつわる呼び方です。
■ヤメ検
検事を辞めて弁護士になった人のことをいいます。検察官は弁護士になる資格を持っており、また弁護士には定年の概念がありません。再就職先として弁護士を選ぶ検察官が一定数いるため、このような呼び方ができました。
■ヤメ判
裁判官を辞めて弁護士になった人のことを言います。裁判官定年後に弁護士になるケースが多いため、一般的に高齢であることが特徴です。
■アカ弁
共産党系の左翼派弁護士のことを言います。社会的弱者への弁護を熱心に行うことに特徴があります。詳しくはwebで。
■ソク独
即独立弁護士の略。弁護士登録後、他の法律事務所などに就職せずにすぐに独立した弁護士のことです。ノキ弁、タク弁、ケー弁の多くはソク独の弁護士です。
■ダメ弁
その名の通り、ダメな弁護士のことを言います。母数が大きくなればピンきりになってしまうものです。
報酬額や規模別の呼ばれ方
取り扱う案件の顧客規模や報酬額によっても下記のようにカテゴライズできます。
■ブル弁
ブルジョワ弁護士の略。主に大企業の法務などを担当し、高価な報酬を受取る弁護士のことをいいます。五大法律事務所といった大手法律事務所、高度な企業法務を専門に扱うブティック事務所、外資系の事務所に所属するパートナー弁護士クラスが、ブル弁にあたります。
■マチ弁
町の弁護士。
中小企業の法務や地域住民の家事事件を中心に扱う弁護士のことです。個人で事務所を開業しているような小規模な事務所の多くはマチ弁と呼ばれます。
本当にいい弁護士とは
弁護士がこのように様々に通称されるようになった背景として、司法改革による弁護士の増加があります。弁護士が増加したことにより、就職先の法律事務所の受け入れ先がなくなり、多くの新人弁護士は就職難に陥りました。そんな中で、イソ弁で経験を積んでいつかはボス弁に・・・という従来の出世ルートとは違い、事務所には所属せずに軒先だけを借りるノキ弁、自宅で開業するタク弁、いきなり独立してソク弁になることを選ぶ弁護士が増えていったのです。
熾烈な生存競争が繰り広げられている弁護士業界ですが、広告競争も激しく一般の人たちがやらせの口コミでない本当の内情を覗くことは難しくなっています。本当に良い弁護士に出会うには、自分が飛び込んで確かめるか、内情を知る本人たちに聞くことが究極の方法であるといえます。