海外取引を行っている場合、ある日突然訴状が送られてきた、なんてこともめずらしくありません。
何をしてよいのかわからず放置するのはもちろんのこと、日本の常識の元で下手な行動を取ったりすると、そこに付け込まれて多額の損害を負うことになってしまう可能性もあります。相手が訴訟慣れしているような場合は、とりわけしっかりとした対処が必要になってきます。
訴えられると何が起きるのか
外国の裁判所に訴訟の申し立てがあった場合、日本の外務省から裁判所を通じて日本語訳付きの訴状が届きます。訴状に対する答弁書を提出し、外国裁判所へ出廷という流れになります。
原告や原告代理人の法律事務所から直接郵送されてきた場合は、適切な通達でないため、直ちに手続きに入らずに先方に正式な方法での通達を要求する必要があります。いずれの受取方法でも、訴状を無視するなどして対応しないと欠席判決とみなされ不利な戦いになってしまうので注意が必要です。
海外の判決は日本で有効なのか
ある国の裁判所で下された判決はその国の領域内でのみ行使することができます。そのため海外の裁判所で下された判決(外国判決)は、日本において直接的な執行力はありません。しかし日本では、外国判決が一定の要件を満たしていれば、日本の確定判決と同一の効力を認めるとしています。外国判決の承認要件は、下記の5つです。すべて問題なければ、特別な手続きは必要なく判決は自動的に認められます(自動承認)。
■確定判決であるか
裁判手続きがすべて終了しており、上訴の余地もなく終局的な判決である必要があります。
■国際裁判管轄権があるか
日本の判断基準において、その国に裁判を行える権利があると認められている必要があります。
日本における国際裁判管轄について:https://www.bengoshierabikata.com/1000/
■敗訴した被告の保護
裁判手続きにおける被告の保護の観点から、正式な手続きを踏んで被告への送達がされなかった場合は、判決の承認を拒むことができます。
知らぬ間に訴えられていて敗訴していた場合や、日本の裁判所を通じての送達が行われなかった場合などは、判決は有効にはなりません。ただし、正しい送達方法を要求せずに答弁書を送ってしまう、先方に説明に行ってしまうなどして一度でも応じてしまった場合は、送達の有効性で争うことが難しくなってしまいます。
■日本の公序良俗に反しないか
判決の内容が日本の公序良俗に反している場合、判決を否認することができます。例えば実際の損害額を上回る巨額な賠償を命じた懲罰的損害賠償は日本の公序良俗に反するとし、拒否されました。
■相互の保証
判決内容が日本の判例と比較して重要な点で相違している場合、判決は認められません。
早急な対応策を
外国から訴状が届いた場合、訴状の送達方法によっては判決が無効になる可能性もあります。下手に対応するとそこに付け込まれて不利に進むこともありますし、場合によってはあえて訴訟を起こすことが有効であったりしますので、まずは弁護士などの専門家に対応を相談することが重要です。